ブックタイトル月刊総務2015年10月号特集_試し読み

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月刊総務2015年10月号特集_試し読み

2015.10 18コーポレートガバナンス・コードの五つ目の基本原則は「株主との対話」であり、伊藤レポートでも「企業と投資家による『高質の対話』を追求する『対話先進国』へ」と提言されている。渋澤さんも先の社外取締役時代の経験も踏まえて、企業と投資家の建設的な対話がいかに重要であるかを説く。「企業経営者はこれまでの資本関係では金融機関か持ち合い企業の人としか話をしてこなかったため、さまざまな視点からのインプットがなく、エクスポージャー(Exposure :保有する資産や負債の中で、市場の価格変動リスクの影響を直接受ける資産の割合)の認識もエクイティ・マインドも持ち得なかった面がありました。一〇年ほど前に当時の村上ファンドが〝物いう株主?として注目を集めたことがありましたが、それは株主としては必要なことであったと思うものの、一方的な面も否めませんでした。〝物を申す?というスタンスは好戦的なものであり、お互いに疲れてしまい長続きしないからです。しかし対話であれば、対等な立場ですし、共通の話題で盛り上がることもできます。そもそも投資家は企業と敵対する関係ではなく、持続的価値創造のために何をしていけばいいのか、目指すところは同じはずです。対話によって何が起こるかといえば、自分にとって何が大事であるのかを再確認することができる。お互いにインプットすることができ、気付きにつながります。対話は営業でもPRでもありません。気付きを具現化するか否かは経営判断です」渋澤さんは、こうした対話は上場企業だけでなく非上場企業にとっても非常に有用だという。すべてのステークホルダーと対話することで、自社の価値創造への道筋が明らかになってくるからだ。特に中小企業で経営者がカリではありませんが、だからワークしないという考え方は間違っています。私自身は有事のときに物がいえるようにしておくためにも、取締役の過半数以上を社外取締役で構成しておくべきだと考えています。二人以上といった人数の問題ではなく半数以上を占めることが要点です」切な会計処理が発覚した大手総合電機メーカーの件は、有事ではなく平時としての認識の中で提示された財務報告であり、社外取締役が不正を見つけることは極めて困難だったでしょう。この件はどちらかというと内部監査の不備であると考えられます。社外取締役もガバナンスも万能の理念や方針を問い直す機会を得られる点で有意義であると考えています。確かに日本人は制度化・義務化されていない事案に自ら考えて対処していくことが苦手な面があるかもしれませんが、今は監督官庁が決めたことに従っていればいい時代ではないことを認識すべきでしょう。高度成長期には他社と横並びで同じように事業を回していけば効率的な経営を実現できていたわけですが、今は正しい答えなど何もない時代です。だからこそ、経営の意思決定のためには株主をはじめとしたさまざまなステークホルダーとの対話が重要です」のではなく、「プリンシプルベース・アプローチ」(原則主義)および「コンプライ・オア・エクスプレイン」の手法を採用している。「コモンズ投信がスチュワードシップ・コードの受け入れを表明したのは比較的早く、昨年五月でした。コードが発表された当初は、その内容について『どれもすでにやっているものばかりだ』との思いがあったのですが、あらためて自分の言葉で作り直してみると、自社の投資家としての方針を再確認できることに気付きました。コーポレートガバナンス・コードにしても、明文化することによって自社 企業の違法行為や不祥事を防止するための「守り」のガバナンス体制の確立から、適切なリスクテイクを後押しし、経営者が果敢な意思決定を行うことができるようにするための「攻め」のガバナンス体制を強化する必要性が高まっている中、コーポレートガバナンス・コードの中で「攻めのガバナンス」への体制の構築においてもっとも効力を発揮することが期待されるのは「取締役会等の責務」だろう。実に一四項目にわたって具体的に落とし込まれている。 「私自身、かつて大手企業の社外取締役を務めたときに、M&A事案で海外機関投資家の意向にそぐわない事態となったことがありました。最初は、どうしてこれほど反対するのか意図がわからず、筆頭株主の意向を確かめるために私からコンタクトしました。先方も会社の社外取締役が自ら連絡を入れたことを歓迎し、経営陣の判断のどこを問題視しているかを明確に説明してくれました。最終的には落としどころを見つけることができましたが、この経験から社外取締役の独立した立場だからこそできることがあると痛感しました。 社外取締役は有事のときに機能することが求められます。先日の不適アニュアルレポートに求められる対話を意識したストーリー性社外取締役は有事のときに機能する