ブックタイトル月刊総務2016年5月号特集_試し読み

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概要

月刊総務2016年5月号特集_試し読み

2016.5 14途上国の労働現場での人権問題や貧困問題などは、ステークホルダーの範疇として認識されていなかったということでもある。そして、二〇〇〇年代に入り、日本の上場企業はSRI(社会的責任投資)調査という欧米型CSRの攻勢をかけられたことで転換期を迎える。「貧困層への環境経営、CSR経営、統合報告を研究・専門分野とするニッセイ基礎研究所の川村雅彦さんの著書『CSR経営 パーフェクトガイド』(Nanaブックス)によれば、一九九〇年代までに形成された日本のCSRの〝DNA?は、戦後の日本社会・経済の変遷の中で「法令順守(コンプライアンス)」「社会貢献」「環境対応」「〝目に見える?ステークホルダー」の四つの流れが合体したものだという(図表?)。中でも、四つ目の「〝目に見える?ステークホルダー」に着目したい。あくまでも日本国内にいて〝目に見える?利害関係者であり、その対象は、顧客、取引先、従業員、株主、地域社会であった。そのことは取りも直さず、海外サプライチェーンにおける新興国・日本企業にとって、CSRは古くて新しいテーマである。元来、日本企業には〝三方よし?や〝論語と算盤?といった精神が根付いていたが、一九六〇年代の高度経済成長期、一九七〇年代の列島改造論・石油ショック、一九八〇年代のバブル拡大期、一九九〇年代のバブル崩壊という時代変遷の中で、企業が利益至上主義に傾いていった結果、産業公害や欠陥商品問題など企業の不祥事が相次いだ。それゆえ、日本におけるCSRの取り組みは、まず企業不祥事に対応するための、コンプライアンスを重視した施策の実行であったともいえる。日本型CSR企業の不正行為の続発コンプライアンスの確立利益至上主義の批判社会貢献活動の推進産業公害の批判 地球環境問題の認識企業中心社会の変容ステークホルダーの意識世界の潮流とこれからのCSR経営日本のCSRは独自の発展の中で欧米の影響を受けつつ、何度か転換期を迎えてきた。そして、二〇一五年には国連持続可能な開発サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択された。グローバルにサプライチェーンが拡大する中で、ステークホルダーは企業から〝目に見える?株主や従業員、取引先だけではないことを認識する必要がある。川村雅彦さん1976 年九州大学大学院工学研究科修士課程(土木)修了。三井海洋開発株式会社に入社、海底石油関連のプロジェクト・マネジメントに従事。1988 年、株式会社ニッセイ基礎研究所入社、環境経営、CSR経営、環境ビジネス、統合報告を中心に、調査研究に従事。CHAPTER1〔監修〕株式会社ニッセイ基礎研究所 上席研究員ESG研究室長総論図表1 日本型CSRのDNA出典:川村雅彦著『CSR経営 パーフェクトガイド』(Nanaブックス)日本のCSRの変遷