ブックタイトル月刊総務2016年5月号特集_試し読み

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概要

月刊総務2016年5月号特集_試し読み

2016.5 16困に終止符」「飢餓に終止符」「健康的な生活の確保と福祉の推進」「ジェンダーの平等の達成・女性と女児のエンパワーメント」「国内および国家間の不平等の是正」等、一七の目標と一六九のターゲットからなる。目標は普遍的であるため、先進国・途上国を問わず、すべての国と人に適用される。ISO26000はステークホルダーを「企業の意思決定や事業活動に対して一つ以上の利害を持つ組織や個人」と説明している。では、自社にとって〝利害を持つ組織や個人?は特定されているだろうか。川村さんはステークホルダーに対する日本企業の視野の狭さを指摘する。とりわけ、海外の現地法人や調達先などの〝目に見えない?サプライチェーン(地球環境問題では将来世代、サプライチェーンでは二次サプライヤーの従業員など)への拡大が不可欠である。 ステークホルダーを特定する際の判断基準には次のようなものがある。・ バリュー(サプライ)チェーンを含めて、自社グループの事業活動により直接・間接に影響を受ける人々や組織・ 自社グループの意思決定や事業活動に対して懸念を表明する人々や組織・ 自社グループに法的義務のある人々や組織・ 個別の影響に対して、自社グループ二〇一一年に米国ハーバード大学のマイケル・E・ポーター教授がCSV(共有価値の創造)を提唱したことにより一変する。「CSRからCSVへ」「CSRはもう古い」といういい方がされた。ポーター教授が提唱したCSVは、端的にいえば「社会的課題の解決を事業化する」こと。ここで前提として理解しておくべき点は、ポーター教授のいうCSRとは本業外で行う寄付や米国流フィランソロピーなどの慈善事業のことであり、世界的なデファクトスタンダードであるISO26000の定義とは隔たりがあることである。川村さんを含む有志は、CSRを軽視するような風潮を懸念し、二〇一四年三月に「CSRとCSVに関する原則」※ を策定・公表。この提言では、「CSRは企業のあらゆる事業活動において不可欠であり、CSVがCSRに取って代わるものではない」「ビジネス上の競争戦略の一手法であるCSVはCSRを前提として進められるべきものであり、CSVを通じて作り出そうとする『社会的価値』が、社会課題を真に解決するものになっているかの検証と評価が必要」であるとうたっている。「本来のCSR」とは、本業外の社会貢献活動を超えたものであり、企業が自らのビジネスによって環境・社会に及ぼす影響(特にネガティブインパクト)に対する責任であるということを忘れてはならない。他方、CSRを推進していればCSVは不要であるというものでもない。川村さんはこの二つを「第一CSR(影響への責任として必須の取り組み:デューデリジェンス)」と「第二CSR(経営戦略として企業の挑戦)」と概念規定し、CSR経営においては両輪として位置付けられるものであると説明している(図表?)。なお、第一CSRと第二CSRの本質的な違いについては、図表?に示した。 企業のCSR経営、すなわち本業を通じて自らの環境問題を含む社会的課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献するためには、「本来のCSRの認識」と「ステークホルダーの認識」の二つの基本認識が肝要である。「本来のCSRの認識」とは、自社の意思決定と事業活動が社会や環境に及ぼす影響を特定し、CSR課題としてどう解決するかを考えること。そして「ステークホルダーの認識」とは、自社事業の影響を直接・間接に受ける(特に、目に見えない)ステークホルダーの利害を尊重し配慮することである。CSR経営の導入(見直し)では、経営トップの明確な意思表明が必須要件であると同時に、実践に移すための体制を整備することが出発点となる。その上で、以下のステップを踏む。〔第一段階〕社会的課題と自社特性を知るステップ① 社会的課題を理解するステップ② 自社の事業特性を再確認するステップ③ 自社のステークホルダーを特定する〔第二段階〕自社の重要なCSR課題を特定するステップ④ 社会的課題と自社事業の関連性を判断するステップ⑤ 自社のマテリアルなCSR課題を特定するステップ⑥ CSR経営の範囲を決定する〔第三段階〕重要なCSR課題を経営に組み込むステップ⑦ マテリアルなCSR課題に優先順位を付けるステップ⑧ CSR経営を体系化し、KPIを策定するステップ⑨「CSR中期計画」を策定し、企業統治に組み込む〔運用段階〕CSR経営を進化・深化させる 昨年九月の「国連持続可能な開発サミット」で、一五〇人を超える世界のリーダーによって採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」が、今年一月一日に正式に発効した。「貧※「CSR とCSV に関する原則」(http://www.csonj.org/images/csr-csv.pdf)「本来のCSR」を経営に落とし込むステップステークホルダー・エンゲージメントの推進