編集よりご挨拶
EIは、いつ頃から注目を集めているのでしょうか?
米『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の編集者によれば、はじめてその兆しを感じたのが、1998年のこと。EQ(こころの知能指数)で有名なダニエル・ゴールマンの論文「What Makes a Leader?」(邦訳「EQが高業績リーダーをつくる」DHBR2000年9月号)が、発表されるや否や、全米で大反響を呼んだそうです。
以降、リーダーやマネジメントの心理的側面に着目する論文や記事がぽつぽつと発表され、とくにここ10年は、「マインドフルネス」「レジリエンス」といったキーワードを目にするようになりました。およそ20年をかけてEIに関する研究が進み、いまや、世界のリーダーが必ず押さえておくべき領域となったのです。
社会や技術の急激な進化によって、個人の生活や人生が翻弄されるようになり、自分自身がどう生きるべきか、周囲の人たちとともに何をなすべきか、答えのない主観的な事柄について考えざるをえない時代となりました。これからますます、自分なりの幸せや目的をどのように見出していくか、つらい状況をどう乗り越え、折れそうな心を回復させていくかといった、ソフト面のスキルが重要となることでしょう。
すでに、EIが高い人は納得のいく人生を送ることができる、という調査結果も出てきています。
本シリーズは、EI研究における世界の第一人者の記事と論文を集めたアンソロジーです。すぐれた知見がコンパクトに読める点が、世界のエグゼクティブに好評を博しています。
ダイヤモンド社
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部
EIシリーズ編集長
前澤ひろみ
「幸せに働く時代がやってきた」
前野 隆司
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長・教授。
1984年東京工業大学卒業、1986年同大学修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校訪問研究員、ハーバード大学訪問教授等を経て現在慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長・教授。慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務。博士(工学)。著書に、『幸福学×経営学』(2018年)、『幸せのメカニズム』(2014年)、『脳はなぜ「心」を作ったのか』(筑摩書房,2004年)など多数。日本機械学会賞(論文)(1999年)、日本ロボット学会論文賞(2003年)、日本バーチャルリアリティー学会論文賞(2007年)などを受賞。専門は、システムデザイン・マネジメント学、幸福学、イノベーション教育など。