例年大人気の文化祭。2020年も大幅に人数は絞ったものの、一般公開が実現できた。生徒も準備に余念がない

1957(昭和32)年、元都立日比谷高校校長の菊地龍道を初代校長に迎えて設立された駒場東邦。「頭脳を資源化することで天然資源の乏しさを克服し、青少年に楽しい夢、明るい希望を回復す」と科学的精神に基づき、開校当初から理数科重点主義を掲げている。完全中高一貫化には1971年から踏み切った。学校説明会では、どのような教科学習を行っているのかに時間を割き、熱心に語る姿に、他校との違いが際立っていた。(ダイヤモンド社教育情報)

理科好き男子のパラダイス

 10月中に3日間、1回約50組100人、合わせて約900人を集めて行われた駒場東邦の学校説明会。会場は母子連れが8割方を占めており、お母さんに人気の男子校であることがうかがえる。

 設立時の経緯からしても、系列が医科大学であることからしても、全般的に理数系の色は濃い。理科の好きな男子にとっては非常にわくわくするような環境が用意されており、校内見学の時にも多くの子どもが実験などに興じていた。

 新型コロナ対応で、説明会自体は1時間ほどとコンパクトにまとめられていた。その半分以上を、どのような教育を駒東はしているのかで費やしたことも印象深い。受験生は自分が入学した後、何が待っているかに期待感が持てる内容であり、ここでもわくわく感を打ち出している。

 東急沿線からの生徒も多く、麻布とどちらを選ぶかで迷う例も多いようだが、校風はどちらかというと開成に近いのかもしれない。

 例年1万5000人以上の来場者がある文化祭は、2020年はコロナ対応で来校人数が大幅に制限されたものの、リアルでも「駒東生のPASSIONが詰まった2日間」を実施できたことは受験生にとっても良い経験となったはずだ。

 探究的な学びを文部科学省も新しい学習指導要領では前面に押し出しているが、「ようやく時代が我々に追いついてきた」という本校教員の感慨は、駒東は「元祖探究型」という気概の表れでもあるのだろう。

 小家(おいえ)一彦校長は、学校の沿革や教育理念などを語った。校章は富士山と旭光を表し、自然や世界と向き合い堅実に、という意味が込められている。自主独立の気概と科学的精神を教育理念とし、2代目校長の高山(こうやま)政雄先生の残したメッセージとして、堅実な基礎学習「slow and steady」と3F精神(Friendship  Fair play  Fighting spirit)に触れた。

「授業こそ探究する場」とし、多様な学校行事や課外活動、本物に触れることの重要性を指導、自ら考え自ら行動することを大切にしている。「課題は予め与えられない」という言葉には、問いを自ら求めるという探究の学びを昔から大切にしてきたことがうかがえる。感受性、論理的思考力、判断力を磨き、自分の言葉で表出すること。それが駒東の教育の目指すところなのだろう。