束縛から自由になり、他者のために生きる

 ここからは宗教部長の野田美由紀先生が学校を案内する。中1の教室の黒板の両脇には聖書や讃美歌の本が置かれた棚があり、 その上には週替わりで花が飾られている。山手の丘の上からは東京スカイツリーも見え、授業中に港から汽笛も聞こえる。

 カイパー記念講堂には創立140周年を記念して同窓会がパイプオルガンを寄贈した。1100人の全校生徒が入れる講堂なのだが、コロナ禍の影響で2020年は放送による礼拝となった。一部の学年が交代で講堂での礼拝に参加している。

 生活指導部長の阿部素子先生も校内のさまざまな場所を紹介していく。クラブ活動は自主性を培う場でもあり、高2が最高学年の幹部として顧問と一緒になって、中高一緒に5年間活動する。

 ユニークな仕組みが、生徒が清掃状況を観察して判定する「おそうじネコ」の掲示。水色ならOKで、黄色、赤色、そして黒色になると掃除をした形跡なしということでやり直しに。最高の状態を示すものとして金色のものもあり、こうした活動は生徒自身が支えている。

 生徒ホールには購買部があり、パンや弁当を販売している。ここには「誰でもピアノ」が置かれている。また、9万冊の蔵書の図書館から借りた本を返却するためのブックポストも生徒の要望で設置された。

 進路指導部長の水谷順一先生は、広島を訪問した際の生徒と放射線研究者のやりとりを語る。畑違いの分野から関わり、これがライフワークになったのだ、と。

 この経験は、フェリスの進路指導の3つの指針につながるものだ。それは、まず自分を知ること。次に、世界を知ること。そして、志を持つこと。どう生きるのかは簡単には見いだせない。時間をかけて考えるものだが、生徒が主体的に選ぶ努力を学校としては手助けしていく。

 進学先は多様で、文系では経済分野、理系では医療分野に進む生徒がやや多い。中には芸術系や体育系を選ぶ生徒もいる。

 いろいろな先生方の説明の節々で「自由」が語られている。それと共に「他者のために(For Others)」という教育のモットーも繰り返された。さまざまな束縛から自由になること、そして他者のために生きること。この二つは表裏一体となってフェリスの生徒を育んで来たであろうことが伺える。